たまごの実験室
卵黄の着色実験
はじめに
皆さんはたまごの黄身の色についてどのようにお考えですか?
お店で売られている卵の黄身の色には薄い(白っぽい)ものから濃い(赤に近い)ものまでいろいろなものがあります。「私は濃いのが好き」、「いや、薄いのが好き」と意見が分かれると思いますが、どちらがよいのでしょうか。 黄身の色が濃いほどおいしくて、栄養価が高いと思われている方も少なくはないと思います。 果たしてこれは事実なのでしょうか。
一般的に、欧米では色の薄いものが好まれ、日本では濃いものが好まれる傾向にあるようです。 実際、米国に行った時の経験では、黄身の色はかなり薄いものしか目にしませんでした。
黄身の色の違いにはどのような意味(栄養価、食味、他)があるのか、何が要因なのか疑問がわいてきます。こんな疑問の一部でも解明したいと考え、今回実験を行いました。
方法
世間ではあまり知られていませんが、養鶏業界では以前から飼料に色素を添加して与えていました。これは黄身の色を操作するためです。実際に実験で確かめてみましょう。
飼料に添加する色素は赤色と黒色を用意します。色素添加後に産んだたまごを毎日集め、ゆでたまごにして黄身の変化を観察します。
赤色色素は「パプリカ(赤ピーマン)」、黒色色素は「ズダンブラック」を使用しました。いずれも粉末状のものです。
ちなみに、ズダンブラックは食品添加物ではなく、実験用の染色に使用される色素です。
実験1-1
飼料に黒色色素(ズダンブラック)を0.1%添加したものを連続して給餌
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実験1-2
飼料に黒色色素(ズダンブラック)を0.1%添加したものを1日、無添加のものを2日、のサイクルで給餌
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実験1-3
飼料に赤色色素(パプリカ)を0.5%添加したものを連続して給餌
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実験2-1
上記「実験1-1」を20日程度実施した後、色素無添加の飼料を継続して給餌
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実験2-2
上記「実験1-2」を20日程度実施した後、色素無添加の飼料を継続して給餌
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実験2-3
上記「実験1-3」を20日程度実施した後、色素無添加の飼料を継続して給餌
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準備
結果
実験結果を表示します。鶏は必ず1日1個産むとは限りませんので一部抜けがあります。
クロ/実験1-1、2-1
マーブル/実験1-2、2-2
アカ/実験1-3、2-3
実験1
実験2
生卵の様子
殻の色の比較
奥の列はすべて色素無添加の卵、手前の列は黒色色素添加の卵
一番左が色素添加後1日目、一番右が5日目です
考察
予想通り、飼料に含まれる色素が黄身に反映されました。
「実験1-3」のパプリカ色素は添加率が低かったため色の違いが写真では判断しにくくなってしまいました。実物では、色は薄いものの確実に着色されているのが確認できました。
「実験2-1」では色素が抜けていく様子がわかりますが、完全には抜けきらず、薄い緑っぽい色のままになってしまいました。黒色色素の添加をストップした後も鶏の体は黒っぽいままで、体内に色素が残留しているためと考えられます。
「実験2-2」も「実験2-1」より色は薄いものの同様の結果となりました。
今回は実施しませんでしたが、イカ墨色素でも同様の実験を行ったことがあります。こちらの結果では、黄身は着色されませんでした。ズダンブラックとイカ墨色素の特徴を比較してみるとズダンブラックは脂溶性、イカ墨色素は水溶性ということがわかりました。
水溶性だと色素成分は排泄物とともに体外に排出されてしまい、体内に色素が残らないため黄身の色に変化が現れなかったと考えられます。
写真はありませんが、ズダンブラックを与えた鶏は全体的に黒っぽくなっていました。体内の色素が黄身の色に影響を与えることは実験2の結果からも確認できました。また、殻の色の比較写真からもわかるように黄身の色のみならず、殻の色も黒っぽくなることが確認できました。
さて、たまごは鶏の体内ではどのように作られるのでしょうか。まず、卵黄部のみが作られた後に白身がくるまれ、卵殻膜、殻が作られ体外に出てきます。卵黄はおよそ8~9日で成熟することが知られています。今回の実験でもこのことがわかりました(黄身は外側から内側に向けて形成され、およそ10日で黄身全体が着色されています)。
卵殻の色の違い、卵黄の色の違いでは栄養価は変わらないことは業界では知られていますが、この実験では着色することを確認するだけでしたので栄養価が異なるかどうかの確認は行いませんでした。
栄養価の分析は検査機関で行う必要があるので今回は実施できませんでしたが、機会があれば栄養価の比較を実施したいと思います。
謝辞
人間の勝手な思いつきで真っ黒になるまで働いてくれた鶏の皆さんに多大なる感謝をいたします。
実験に関するご意見ご要望などを受け付けております。
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